このクルマのためだけに長野に来たと言っても過言でない程…!
日産 チェリークーペ 1200GL(KPE10HT)
1971~72年式
長野県上田盆地にて 2017年12月29日撮影
…さて、本日紹介しますのは、実際に見た時は度肝を抜かれたとんでもない草ヒロでございます。
見ての通り、日産のチェリークーペ…!
チェリーというのは、日産の大衆車にして最下級車種であるサニーよりも更に下のクラスを狙って開発された乗用車。
ライバルメーカーであるトヨタは、60年代の前半より1000ccに満たないミニマムクラスの登録車の市場に参入していたため、それに日産も対抗しようということで登場したという経緯があります。古参勢のパブリカにはさすがに劣るかと思いきや、当時はまだ珍しかったFFのレイアウトがチェリーには採用されたことで、FRであったパブリカよりも室内空間が大きく取れたため居住性が良かったと言います。
…とは言えとは言え、さすがにネームバリューのあるトヨタのパブリカには勝つことは出来ず、チェリーはそこまでヒットもせず、悲しいかなパルサーに後継を譲り、2代でその生涯を閉じました。パルサーは排気量がチェリーよりも大きくなっているので、実質的な後継者はマーチということになります。
…で、このクルマはそんなチェリーの初代モデル。
初代チェリーというだけでも十分珍しいですが、これは草ヒロとしては更に珍しいクーペなのです!!
クーペとは言っても、ありきたりなデザインではなく、極太のCピラーを採用してステーションワゴンのような使い方も出来そうな独特なものでした。当時のコンパクトカーとしてはかなり先進的なデザインだったのではないでしょうか。個人的には70年代の乗用車の中ではベストスリーに入るくらいの素晴らしいデザインだと思います。
このクルマのデザインで面白いと思うのは、ただでさえ昔のクルマだから小さいというのに、このクルマはこの当時の登録車の中でも最小クラス。だから、見た目からしてメチャ小さく見えるはずなのに、小さく見えないというところ。
恐らくこれは、視覚効果を狙ったことでそのように見えるのだと思います。…というのも、窓面積を意図的に小さく、Cピラーを強調したデザインにすることで、窓の面積が通常のチェリーと同じくらいに思えるという錯覚を利用して、相対的にクルマのサイズを大きく見せることが出来る…という効果を睨んでデザインされていると考えられます。
また、クーペのスタイルをノッチバックスタイルではなく、限りなくワゴンに近いハッチバックスタイルを採用したことによる影響もあると思われます。斜め前方から見た時に、ノッチバックよりもハッチバックの方が奥の方までボディが伸びているように見えるため、その分大きく見えるということなのです。
以上の様に、視覚的トリックを利用することによって、小さい車格ながらも大きく見せることでワンランク上の上質感というものを表現するという発想が素晴らしく思えてしょうがないのであります。
このクルマは凄い…!と、僕は思いますね。