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見習い 「博士、撮影も終わってクルマに乗り込んだんですし、さっきの続きを話してくださいよ!」
博士 「しょうがないヤツじゃのう。…じゃが、決して草ヒロを見落とすでないぞ!」
助手 「まーたボクが見つけてしまうかも知れませんしね~。博士?」
博士 「…な、なんじゃその言い方は。ワシも決して草ヒロ探しをサボっとるわけじゃないぞ!当然、目に入ったら話は中断するつもりじゃ!」
助手 「…なら、いいんですけど。」
博士 「フン。」
※回想シーンの背景について
前回の回想
前回同様、今回の回想でも分かりやすさ重視のために、博士たちの地元に伝わる方言の大笑弁そのままで書くのではなく、現代標準語(口語)に翻訳してお送りします…。
ホラそこ!方言にするのが面倒くさかっただけだろ、とか言わない!
説明マン
「説明しよう!前回の回想のあらすじはこうだ。」
「ボスこと、『てっちゃん』にできた新たな親友である『よっちゃん』は、ボスとの会話により、ボスが草ヒロ好きであることを知る。てっちゃんは登山が趣味であった為、まだ行ったことのない地元の山へ今度の休みに登ることにしたのだが、その道中で草ヒロを見つけたとしたら、ボスのために写真を撮ったり観察記録を付けたりしてボスを喜ばそうと考えていた…。」
「また、これは前回も説明したことだが、以下の回想シーンの舞台は1973年の7月頃だ!つまりボスたちは、中学3年生というわけだな。…それでは、博士による昔話をみんなも楽しんでくれ!また、どこかで会おう!」
※これより、ボスの話に基づいた、博士の想像による回想シーン
ある日、地元の山に登っていたよっちゃん(下曽我庸助)は、ある草ヒロ(車種は、日産・キャブスターライトバン、であった)を見つける。
下曽我 「ひぃーっ…。」(地元の山もそろそろ全制覇しそうだ。それにしてもこの道は鬱蒼としているなぁ。なんだかワクワクしてきた!)
下曽我 (あれ…?なんかクルマみたいなのが…あんなところに…。これってもしや、てっちゃんが言ってた“草ヒロ”ってやつ!?)
下曽我 (やっほーい!!てっちゃんは山の中に草ヒロなんてあるハズねぇって言ってたけど、僕見つけっちゃったもんね~!この写真見せたら、てっちゃんきっと驚くし喜ぶだろうな~!)
下曽我 (ひぃ…ふぅ…みぃ…けっこうきつい坂だな…。下から見たときはそうでもなかったけど…)
下曽我 (よし…!やっと着いた!…でーっと、草ヒロは草ヒロは~…)
下曽我 (あっ!あったあった!写真写真~…の前に!嬉しいから日記をしたためておこっと。庸助の登山日誌だ。)
下曽我 (…で、しゃしん!)
カシャ!
カシャ!
下曽我 (…ちょっとこっからじゃちゃんと写ってないかな。もっと近付いて…)
カシャ!
下曽我 「うん!よし!」
ズガラァ…!
下曽我 「うわっ…!」(な、なんだっ!?)
下曽我 「あぉああーーーっ!」
ドスンッ!!!
下曽我 「いっってー!…ウウウ…」(ガケから落ちた…?……っ痛い!!も、もう駄目かも…。…いや、諦めずに助けを…!)
そう…よっちゃんは登山中に偶然草ヒロを見つけて、てっちゃん(ボス)のために草ヒロを撮影・記録しようと近付いたのだが、その草ヒロは崖のすぐ近くにあったため、よっちゃんは運悪く足を滑らせて崖下へと滑落してしまったのであった…。
それから、よっちゃんは助けを呼ぶも、あまり人の通らない登山ルートであったために、捜索隊が到着するまで、ずっとうずくまっていなければならなかった…!
落ちた時点でよっちゃんの体力はかなり消耗してしまい、更に運の悪いことに、落下の衝撃で骨折していたため、崖をよじ登って登山道へ戻ることは出来なかった…。
…そう…来るかも分からない救助を待つ他なかったのだ…。
夜になってもよっちゃんが帰ってこないことを心配したご両親が、警察に捜索願を届けて捜索を開始したときには時すでに遅し。
捜索隊が彼を発見したときにはもう…変わり果てた姿で息を引き取っていたのであった…。
※回想終了
博士 「…というわけなのじゃ…。」
見習い 「……っ…。」
助手 「…………。」ボォーム!キュッ!ボロロロ…ブン!
博士 「…そうじゃ。よっちゃんは、崖から落ちて、亡くなってしもうたのじゃ…。」
見習い 「………。」
博士 「可哀想にのう…。落ちたときは意識があって、助けを何度も読んでも人が全く通らない…。そして時間が経過して辺りが真っ暗になってもまだ虫の息ながらも意識はあったらしく、誰も助けに来ないという不安と絶望の中で…亡くなってしもうたのじゃ…。…無念にのう…。」
助手 「……うっ…。」
見習い 「…ぐっ……。」
助手 「…そ、そうだったのですか…。確かに、それは悲しいお話ですね…。」
見習い 「…で、でも、そのよっちゃんの死と、ボスの草ヒロ嫌いはどう関係があるんですか?この話を聞く限りでは、よっちゃんが草ヒロを忌み嫌うようになったのならまだ分かりますけど…。」
博士 「ワシはよっちゃんの死の顛末を聞かされただけで、徹がなぜ草ヒロを嫌うようになったのかは、教えてはくれんかった…。よっちゃんが崖から落ちて変わり果てた状態で見つかったと先生から聞いた時はまだ、ボスは草ヒロを嫌っていなかったはずなんじゃが、その数日後、ボスが顛末をすっかりワシに話してきた後、『草ヒロ探索はもうしない。俺は草ヒロなんか大っ嫌いだ!博司…お前も草ヒロを嫌いにならないなら、俺はもうお前の親友でも…友達でもなんでもない…!』という感じのことを言ってきた記憶はある。」
助手 「…なるほど、そうやってボスと博士は絶交したわけですね。」
博士 「徹は特によっちゃんと仲が良かったからのう…。恐らく、よっちゃんの親御さんから、真実を聞かされたと思うんじゃ。」
見習い 「真実…?」
博士 「じゃから、ワシが話したことじゃよ。ただ登山道から足を滑らせて落ちたのではなく、崖の近くの草ヒロの写真を撮っている最中に足を滑らせて落ちたということじゃ。カメラに草ヒロの写真が残っていたことと、転落位置やゲソ痕から警察も、転落の原因はそれで間違いないということじゃ。じゃが先生は、徹が責任を感じないように、徹がクラスメイトから非難されないように、その真実をぼかして伝えたんじゃろうな。」
見習い 「……。」
博士 「じゃから、ワシもまさか草ヒロが絡んどるなんて想像もつかんかったわけじゃ。ただの運の悪い事故という認識しかなかった。…しかし、徹に絶交宣言された日、絶交宣言する直前に、徹から真実を伝えられたときはそりゃあ驚いたわい。…じゃがのう、いくらそれで徹が草ヒロ嫌いになったからと言って、ワシも草ヒロ嫌いになろうだなんて、どだい無理な話じゃて。」
見習い 「そりゃそうですよ!やっぱりボスって、自分勝手な人間ですね!」
博士 「…否、それともまた違うと思うんじゃ。徹は自分が草ヒロ嫌いになった理由こそ教えてくれんかったが、よっちゃんが亡くなった本当の原因はワシに伝えてくれた。…そのことから、なんとなーしに想像できるじゃろ?…徹が草ヒロ嫌いになった理由。」
助手 「……あ、責任を感じてってことですか?自分が草ヒロ好きだなんて教えていなかったら、よっちゃんは崖の近くにある草ヒロをボスのためにわざわざ撮影しようとしなかったからって…」
博士 「そうじゃろうな。徹は責任感は昔から強い男じゃったから、本人にしてみれば、草ヒロを撮影しようとして亡くなったなんて聞いたら相当ショックじゃろう。自分のせいで亡くなったと思ったに違いない。…それで、何度もずっと思い悩むうちに、そもそも草ヒロなんてものがこの世に存在するのが悪いのだ…それが諸悪の根源だ…という考えに至ったのかも知れんのう。」
見習い 「えぇ~……。…まったく、無茶苦茶な理論ですね!確かにその草ヒロは、間接的に人を殺してしまったのかも知れませんけど、だからといって、草ヒロ全てが悪いわけではないのに!」
博士 「そうじゃ。…じゃが、そのような考えに至るのも無理もないと思うんじゃ。これからもずっと一緒だと思っていた親友が、突然亡くなったんじゃから。そりゃあショックじゃ。正常な判断ができない精神状態になってもおかしくはないんじゃないのか。」
見習い 「……うっ…。…まあ…確かに…そう、かも…。」
博士 「もしワシが徹の立場じゃったら、ワシも草ヒロを忌み嫌うようになっていたかも知れんのう。…ま、徹の立場じゃないから、こうして草ヒロ研究活動を続けているんじゃけどな。ワシとよっちゃんの死の間には、何のインガもないんじゃからの。」
助手 「…なんか開き直ってる感はありますけど、確かにそうですよね…。」
見習い 「ところで、草滅会が設立されたのはどうしてですか?…まさか、中学生一人であんなものを作れるわけではないでしょう。」
博士 「まあ、最初は弱小組織じゃったろうが、確かに今のように全国的に展開しようと思ったら、協力者の存在はあってしかるべきじゃろうな。…しかし、ワシは草滅会を発足させた経緯や方法については一切聞ぃとらんから、分からんわい。」
見習い 「そんな~!せっかく知りたかったのにぃ~」
博士 「まあ、そういうのは想像にお任せしといたほうがよいじゃろう。…しかし、随分長いこと走ったのう。おい草川よ、草ヒロは見つからんのか?」
助手 「博士、それがなかなか見つからなくって、結構走ったんで、甲府盆地の南の方まで来てしまったようですね。この辺から、また果樹園地帯が広がり出すので、見つかるかも知れませんね!」
見習い 「あ!あった!」
助手 「フラグの回収早すぎっ!!」
博士 「…なんじゃそりゃ?フラ…?フグ…?」
見習い 「まあ、博士は知らなくていいっすよ!」
博士 「なんじゃあ…一体…?」
No.029
ホンダ LN360
1967~69年式
用途:物置 場所:果樹園(モモ)
○ 博士メモ ○
草ヒロ学的に見てもなかなかおっかない朽ち方をしておるのう。表面の錆び方は素晴らしいんじゃが、屋根が潰れとるのが勿体無い。…とは言え、このアンバランスな感じがそそると言えばそそるのじゃがな。草ヒロはひとつとして同じ状態のモンがない。同じ車種でも、錆び方や朽ち方が異なるのじゃ。
『草ヒロは生き物』という箴言をワシは提唱しておるのじゃが、まさにこの個体はそんな感じがするのう。元々はピカピカだったクルマが、果樹園に放置されていくことで錆び、屋根に載せられた資材の重みで屋根が潰れ…流動的に状態が変化しちょるのじゃ。次来た時は、どのような状態になっておるのかのう…。楽しみじゃ。
見習い 「うわっ!これLN360ですよ!珍しっ!」
助手 「LN360…?N360じゃなくて?」
博士 「エヌッコロ…N360のバンのことじゃよ。ワシが子供の頃、よぉ走っとったわい。」
助手 「博士も知ってたんですか。でも、N360ってテールランプこんなデザインでしたっけ?なんかもうちょっと上の方にテールランプがあったような…。」
見習い 「LNはテールゲートの開口面積を大きくするために、正方形に近いカタチからより細長い長方形にして、位置を下げたんですよ。」
助手 「そうなんだ~。フロントもボロボロだし、リアもリアだし、ボクが見つけてたとしてもN360のバンだなんて分からなかっただろうな~。」
見習い 「ちなみに、補足しますと、リアサイドにあるスリットのデザインからすると、最初期型だということが分かるんですよ。」
博士 「ほーう。そうなのか。昔LNを見とったワシじゃが、それは知らなんだ。」
助手 「それはそうとしても、凄い朽ち方ですね、博士。」
博士 「果樹園のど真ん中にあるからのう。果樹園の中にある草ヒロでボロボロに朽ちとるものがあるのは、果樹園に散布される農薬が原因なのじゃ。」
助手 「農薬に含まれている化学物質が鉄を酸化させてダメにしてしまうってことですものね。」
博士 「そうじゃ。それが錆びた状態というやつじゃ。そもそも、鉄は空気中の酸素と結びつくことでも酸化が起こるから、その辺にほっぽっといてもどんどん錆が進行していくんじゃが、農薬はその酸化のスピードを早めるというわけじゃ。」
見習い 「…あれ?でも現役の旧車って、全然錆びてませんけど…。」
博士 「そりゃ普通にしといて錆びたら大問題じゃろうが!鉄は錆びやすい金属じゃが、クルマは鉄むき出しの状態で売っちょるわけじゃないじゃろ?」
見習い 「あっそうか、塗装されているのか。」
博士 「そういうことじゃ。塗装によって鉄が酸素に触れることを防いじょるわけじゃな。」
助手 「それで、塗装が経年劣化や裂傷によって剥げることで鉄が露出して、そこからどんどん錆びていくってことだね。」
見習い 「なーるほど!だから草ヒロは錆びているんすね~。」
博士 「うむ。オヌシも草研におるんじゃったら、車種ばかりに気を取られとらんで、そういったことも勉強するんじゃぞ?」
見習い 「はーい…。…いやでも、博士の草ヒロ解説は勉強になりました!…結局は、このLNも元々綺麗な状態でも、使ったり放置したりすることでボディの塗装が剥げて、そこに農薬が付着することによってボディが酸化して、どんどん錆が広がっていって今やこんなボロボロのグサグサになっちゃったってワケなんすね。」
博士 「ホッホッホッ。そうじゃぞ~?屋根も完全に凹んでしもて、物置としての体は成しとらんの。」
助手 「一応、凹んだ屋根には鉄棒が載せられているようですから、一応物置なんでしょうかね?」
博士 「この鉄棒のせいで屋根の崩壊が加速したんじゃないか。ただでさえ軽のヤワなピラーじゃし、それが農薬によって強度が落ち、そこでこの重い鉄棒。そりゃあこうなるわな。」
助手 「今回の草ヒロは、なんだか色々勉強になった気がしますね。」
博士 「こういった情報量の多い草ヒロは、様々な考察ポイントがあるから良き研究材料になるのう。」
助手 「なんだかもっと語らいたい気もしますが、小布施くんたちに先を越されないように次なる草ヒロを探しましょうよ、博士!」
博士 「うむ。ワシらが負けたら年長者の面目丸つぶれじゃからのう。草川よ、とっととクルマを出すぞい!」
助手 「ハイ!分かってますって!草田くんも、写真撮り終わったら…行こう!」
見習い 「はーい!今行きますよ~。」
つづく(『博士チーム』編だけ読みたい方はコチラ)
つづく(『草ヒロ物語3』を通して読みたい方はコチラ)
「この物語、そして物語に登場する団体・登場人物は、全てフィクションじゃ。実在するものとは一切関係ないからの。じゃが、草ヒロは実在するから、読者の諸君も探してみぃ。」
「ボスが草ヒロを嫌いになったのは、悲しいいきさつがあったのですね…。」
「そうじゃな。あれは徹も悪うないし、草ヒロも悪うない、てっちゃんも悪うない。本当にただただ悲しい話じゃて。」
「でもボスは、精神的ストレスで草ヒロが悪いという思考に至ってしまったんですよね。」
「まあ、無理もないんじゃがの。」
「しかしですねぇ博士、今回の物語で、草滅会が設立されたいきさつも判明するって、どっかで聞いた気がするんですけど…?」
「知らん。知らんもんは知らんわい。…あれじゃないか。『草ヒロ物語3』じゃのうて、『草ヒロ“撤去”物語3』で明らかになるんじゃないか?気を失ったボスが目を覚ましてから、色々と過去を回顧して語りだすという、“ありきたりな”シナリオになるんじゃろう。」
「なーるほどー!じゃあ、草滅会の話を聞きたい人は『草ヒロ“撤去”物語3』を読めばいいってことですね!」
「そういうことじゃな。じゃが、草ヒロ好きの諸君には、是非とも『草ヒロ物語3』だけを読んでほしいところじゃけどな!ホッホッホッホッ…!」