『草ヒロ“撤去”物語』について知りたい人はコチラ
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―AM11:15 草ヒロぼくめつ会山梨支部塩山局保健室にて―
牧丘 「…しっかし大丈夫ですかね、信濃様…。こんなこと、俺初めてなので正直不安です…」
勝沼 「大丈夫だ牧丘。信濃様はきっと目を覚まされる!しかも、それほど重大なご病気でもないんだ。一過性の過換気症候群だったんだからな。」
牧丘 「そうですよね…。」
ボス (……む……んん?………あれ…。私は…一体……。)
ボス (…ここは……どこだ…?………びょう、いん…?)
ボス (……そして……この、スーツの男たちは何者だ…?…白衣ではないということは…医者ではないのか……?)
ボス (そもそも…なぜ、私がこんな所に…?今日は……山中たちと………あ…!草ヒロ探索にいったはず……)
ボス (……っ!!思い出したっ!……私は…あの草ヒロを見て、“あのこと”を思い出して、動悸とめまいがして……そのまま気を失ったんだ…)
ボス (…ってことは、こいつらは草滅会の……。…よかった。普通の病院に連れてこられていたら、どうしようかと思っていた…。)
ボス (…ところで、体は…動くのか…?)ゴソッ
勝沼 「あっ!信濃様が目を覚まされたぞ!」
ボス 「おぉー…」(あ、声も出た…。)
牧丘 「あぁっ!!…信濃様!信濃様!ご無事でしたか!…よかったです!本当に…。」
勝沼 「目を覚まされて私どもも喜ばしい限りでございます。ご気分の方はいかがでしょうか?」
ボス 「…うむ。大丈夫だ。」(実はまだ本調子ではないのだが…じきに回復するだろう。…こいつらをあまり心配はさせたくない。)
勝沼・牧丘 「それはそれは…!」
勝沼 「さて…落ち着いたところで、もう一度自己紹介させていただきますが、私は草滅会山梨支部の塩山局長を務めさせていただいております、勝沼 武努男(かつぬま ぶどお)…と、申します。…そしてこの男が、部下の牧丘 桜矢(まきおか おうや)です。…改めまして信濃様、どうぞ宜しくお願い致します。」
牧丘 「よろしくおねがいします!」
ボス 「これはご丁寧にありがとう。……勝沼、牧丘よ。本当にすまないな…迷惑をかけてしまって…。助けてくれてありがとう。」
勝沼 「いえいえ、とんでもございませんよ!信濃様の身に何かが起これば、どこからでも飛んでいくのが我々草滅会の会員なんですから!」
牧丘 「むしろこのまま助からなかったら、私たちどう詫びればよいのやら…いや、詫びることすらおこがましいような気がして…」
ボス 「ハハッ…大丈夫だ。気にしなくてもいいさ。…俺もまさかこんなことになるとは思ってもみなかったが、まあ、あんな草ヒロを見つけてしまっては無理もない。」
牧丘 「…と、言いますと?」
勝沼 「おい牧丘!変な詮索はよせよ。…信濃様、これは失礼いたしました…。ヘヘ…」
ボス 「別に構わんよ。私も話した方が気持ちの整理も付くだろうから、私にとっても有益だ。」
勝沼 「そうですか、ありがとうございます!」 牧丘 「ありがとうございます!」
勝沼 「さすが信濃様は御心が広い!信濃国のように広くあらせられる!」
ボス 「おいおい、変なお世辞はよせよ…。…で、事の顛末だが………(ながいのでしょうりゃく/全て読むにはココ(前編)とココ(後編)をクリック!『博士の回想シーン』を読もう!)………というわけだったのだ。」
勝沼・牧丘 「なるほど……。」
ボス 「…そういえば、思い出したんだが、このことは会員になった者は全員が知るはずだったような気がするのだが。」
勝沼 「…あ!どこかで聞いたと思ったら、『沿革と掟』に、草滅会が発足したきっかけや発足の流れが載っておりましたね。」
説明マン
「説明しよう!『沿革と掟』というのは、正式名称:『草ヒロぼくめつ会:沿革と掟』といって、草滅会に入会した者全員に配布される、草滅会の歴史と会員でいるための決まり事や禁止事項が載った冊子のことである!」
ボス 「やっぱりそうだったか。知っていることを話してしまって、申し訳なかったな。」
勝沼 「いえいえ、『沿革と掟』に記載されているお話よりも詳細な内容でしたし、信濃様の御口から直接そのお話が聞けただけでも貴重な経験でございますよ!」
牧丘 「えーっと…じゃあ、草滅会が発足された流れ…ってなんでしたっけ?」
勝沼 「おい!それも忘れたのかよ!?…『沿革と掟』を見ろ!全部ひっくるめて載ってるから!」
牧丘 ガサゴソ、ガサゴソ…「……あー、すみません。どうやら、おウチに忘れてきたようで…。」
勝沼 「ハァァ??…『沿革と掟』はなぁ、会員なら絶対に肌身離さず身に着けておくべきモンだぞ!しかも信濃様の御前でこんな醜態をさらして…!どうなっても文句は言えねぇぞ!」
牧丘 「ひぃぃ!申し訳ございません、『副ボス』!そして信濃様も、大変申し訳ございません!」
説明マン
「またまた説明しよう!『副ボス』という単語が牧丘の口から出てきたが、これは局長を意味する草滅会の業界用語であり、自分が所属する局の局長は『副ボス』と呼ぶことになっている。そして他の局の局長は『“名字”+“さん”』と呼ばなければならないのだ!局が設けられているのは山梨支部と長野支部のみだな。」
「ちなみに、自分が所属している支部長のことは『ボス』と呼ぶことになっている。そして他の支部の支部長は、局長と同じく『“名字”+“さん”』と呼ばなければならないのだ!」
「…というわけで、山中と上田はボス(信濃徹)のことを『ボス』と呼んでいるが、それは自分が所属している本部の長だからであって、支部や局の者はボスのことは“信濃様”と呼ばなければならないことになっている。キミも、草滅会に入会することになった時は、これらのことは忘れるなよ!」
ボス 「まぁまぁ落ち着け。落ち着け。…忘れるときだってあるさ。それに、君は新人だろう?」
牧丘 「え?」
ボス 「バッジ。」
説明マン
「三度目の説明しようだ!…草滅会は、入会すると新人バッジが貸与され、入会してからの勤務日の合計が365日、つまり1年になるまではスーツの襟に付けておかなければならないのである。入会してから1年ではなく、累計勤務日が1年なのは、所属の長さではなく、経験の長さを重視したボスの考えが反映されているのだ!」
「ちなみに、勤務日の合計が3年、5年、10年、25年、50年に達すると、それぞれ異なったデザインの勲章が授与される。また、発見した草ヒロや撤去した草ヒロの台数(50台、100台、250台、500台、1000台、2000台、5000台、10000台)、によっても表彰が行われてバッジが授与されるため、身に着けているバッジの種類や数で、その会員の実力が計れるというわけである!…またまたちなみに、10000台のバッジを身に着けているのは草滅会会長(ドン)の鉄木代昭蔵のみだ!おそらく、他にこのバッジを身に着けることの出来る会員は、ボスを含めても現れることはないだろう…!」
「今回の説明はこれにて終了!何度もお騒がせして申し訳ないが、いつか説明しなければならないときが来た時は、またしても画面の前の諸君の前に現れることだろう!また会おう!」
牧丘 「あっ!そうですね…まだ入会して8か月くらいです…。」
ボス 「ならまだ慣れないこともあるだろう。あまり気にするな。」
勝沼 「本当に信濃様はお優しい、慈愛に満ちた方ですねぇ!…ほら牧丘、信濃様が寛容なお心でお許しくださったんだ!感謝の気持ちを!」
牧丘 「ありがとうございます…!」
勝沼 「すみませんねぇ…ウチの若いのがこんな奴で…」
ボス 「若い時は皆こんなものさ。…で、牧丘よ。発足の経緯は知りたいんだってな。」
牧丘 「ええ!」
ボス 「ところでだが勝沼。」
勝沼 「はい信濃様!なんでございましょう?」
ボス 「こんな所でずっと話しているのも時間の無駄だ。探索に出かけてもいいか?」
勝沼 「ええっ、信濃様、お体の方は大丈夫なのですか?」
ボス 「なあに。心配するな…。だって、一過性の喘息なのだろう?」
勝沼 「まあ、確かにそうなんですが…。」
ボス 「医者は何と言ってたんだ?」
勝沼 「当番医も、信濃様が目を覚まされたら別に動かれても構わないとは申しておりました。」
ボス 「だろう?…これ以上、私の部下に心配をかけるのもよくないし、探索を任せっきりなのもよろしくない。だから、ちょっと探索したいのだ。」
牧丘 「信濃様は部下思いなのですね…。」
勝沼 「ええ。信濃様がそう仰るのであれば、ご期待にお応えします!ウチの探索車をお使いください。」
ボス 「よし!…そうと決まれば、じゃあ牧丘、話はクルマの中だ。」
牧丘 「ありがとうございます!」
バムッ!パンッム!!
勝沼 「…では、出発します!」ブブーム…
牧丘 「副ボス、運転よろしくお願いします!」
ボス 「すまないな。勝沼よ、よろしく頼むぞ。……では早速話すが……草滅会発足の経緯は、さっきの話の続きになるんだが…こうだ…。」
※これより、ボスの実体験に基づく回想シーン(現代標準語訳)
草滅会の源流となる会が発足したのは、よっちゃんの死からちょうど一年が経過した、私がまだ高校1年生の頃だった…。
よっちゃんが亡くなってから、ちょうど一年となる一周忌。
私は、よっちゃんの死地に花を手向けに行った…。
ボス(16) 「よっちゃん…。君がいなくなって一年か…。一年経ってしまったけど、今まで君のことを忘れたことは無かったよ。」
……
ファサッ…
……
ボス 「…ハァ…新しい親友が出来たと思ったのに…草ヒロのせいで…君が命を落とすことになってしまった…。本当に、申し訳ない…。俺があの時、草ヒロのことを話さなければ…!いくら悔やんでも、悔み切れねぇっ…!…ウウ…グス…ウウウ…エッグ…エッグ……」
花を手向けながら涙をぬぐっていると、後ろから人の影が、やってきたのだ。
まさかこの人が、今後の私の人生を大きく好転させるとは、この時は夢にも思っていなかった…。
ドン(31) ガサッ…「ボウズ。…草ヒロは、憎たらしく、おぞましい存在だよな…?」
ボス ビクッ!! 「ハッ…!?」
ドン 「草ヒロなんて、この世から全て消え去ってほしいと思わないか?」
ボス クルッ「……お、お、おじさん…だだ、誰?………なんで、くさh」
ドン 「ククク…そう怖がるなよ。…『変なおじさんが、何故自分のことを知ってるか不思議』って顔だな。」
ボス 「…えぇ。…おじさん…い、一体、何者…なの…?」
ドン 「私は君と同じく、草ヒロが大嫌いな人間だよ。…いや、『大嫌い』という一言で済ますことすらできないくらい草ヒロが嫌いで憎い人間だ。」
ボス 「は、はぁ…」
ドン 「昔ここに、草ヒロがあったことを知っているだろう?」
ボス 「…、……。」
ドン 「私もここに草ヒロがあることを、ちょうど一年ほど前に知ったんだ。」
ボス 「一年前…。」(ちょうど一年前って…)
ドン 「こんな山奥だが、草ヒロはこの世から一つ残らず消し去りたいと思っているんでね。…見つけたらすぐに撤去しようと思ったんだが、第二の調査に行ったとき、草ヒロの周囲に規制線が張られていたんだ…」
ボス 「それって…」
ドン 「そう。私は全部知っているよ。もう何も言わなくていい。嫌なことは思い出したくないだろう?」
ボス 「まあ…」
ドン 「私はそこで現場保持をしている警官に聞いてみたんだ。すると、草ヒロを撮影しようとして転落死した子供がいるんだとさ。そこで私は、その子の親友は草ヒロのことを大嫌いになっているに違いないと踏んでね。さすがに、その子のことやその交友関係については教えてもらうことは出来なかったが、事件の日から一年経過した時に、その関係者が花を手向けに来ると考えたのさ。」
ボス 「それで…行ってみたら俺がいたから、話しかけたんだ。」
ドン 「そういうことだ。」
ボス 「おじさん、頭いいね…!」
ドン 「君こそ。理解が早い…。見込みがあるな。」
ボス 「…見込み…?…でも一体何故、俺なんか…?」
ドン 「だから、私と共にこの世に存在する草ヒロを撲滅しようではないか、ということだ。」
ボス 「……?」
ドン 「私はね、由緒正しい家系で生まれ育ってきてね。それに今の仕事も順風満帆。だから金には一切、苦労していないのさ。…それで、趣味の一環として、草ヒロをこの世から全て消し去ってしまおうと考えている。金をバラまいてな。」
ボス 「なるほど…確かに、撤去するのにもお金が必要ですものね。」
ドン 「それもそう。…しかし、私は孤独だ。草ヒロのおぞましさ、怖ろしさ、有害さをいくら訴えても、それに応えてくれる人は私の周りには誰もいなかった…。私の気持ちなど、誰も理解してくれやしなかったのさ…。いくら金があったとしても、賛同者がいなければ、この活動は長くは続かないだろう?」
ボス 「それで、僕を仲間に引き入れようってわけですか。」
ドン 「そういうことだ。私は仲間が増えてwin、君は草ヒロ撤去活動に従事でき、友達の仇も討ててwin…。つまりwin-winの関係だろう?悪い話ではない。どうだ?」
ボス (……なんだか胡散臭いオッサンだけど、今の俺の気持ちに整理を付けるためには、この人に付いていくしかない!…コイツを利用して、よっちゃんの仇をとってやるんだ!)
牧丘 「あ!草ヒロが見つかりました!」
※牧丘により、回想一旦中断
ボス 「なんだと!?」
牧丘 「申し訳ございません。せっかく信濃様が興味深いお話をしていただけていらっしゃるのですが、草ヒロを見つけてしまうと、つい体が反応してしまって…」
ボス 「いいんだ。グッジョブだ牧丘。それでこそ草ヒロ撤去人の鑑だよ。新人とは思えないレスポンスだ。…どんな時であれ、草ヒロを見つけたらすぐに報告連絡相談、そして観察、というのが草滅会の掟だからな。私の話は、話半分に聞いてもらっても構わない。」
牧丘 「ありがとうございます。しかし、信濃様のお話、すごく面白いです。“あのお方”と信濃様の馴初めって、こんなだったんですね…。」
勝沼 「だから牧丘、それ全て『沿革と掟』に書いてあることなんだぞ?」
牧丘 「アハハ…すみません。」
ボス 「まあ、とにかく草ヒロの所へ行こう。」
勝沼・牧丘 「はい!」
パムッ!タン!!
No.027
トヨタ タウンエース
ジャマレベル:★☆☆☆☆(私有地の奥地にあってるわけだから、ジャマとは言えないのだ。)
景観悪レベル:★★☆☆☆(草ヒロが錆に錆びて汚らわしいが、果樹園農道からしか目にすることが出来ない。景観を破壊しているとはあまり言えないだろう。)
貴重レベル:★☆☆☆☆(初代タウンエースは掃いて捨てるほどいる。発見・撤去報告も毎月のように行われているのだ。)
総合評価:私が目を覚ましてから最初に見つけた草ヒロ。これは撤去するしかないな!
勝沼 「タウンエースでございますね。こいつはつい先日も、韮崎局が撤去しておりました。」
牧丘 「本当によく見かけるクルマですよね~。」
ボス 「どうやらそのようだな。草滅会全体で平均したら、半年に一台のペースで発見されているそうだ。」
勝沼 「撤去しても撤去しても湧いて出てくるようですよ…まったく…。」
牧丘 「ですが、こうして一台ずつ撤去していけば、いつかは撲滅できる。塵も積もれば山となるってやつですよ。副ボスもいつも仰っているではありませんか…!」
勝沼 「そうだったな…。」
ボス 「いいこと言ったぞ、牧丘…!」
牧丘 「てへへ…ありがとうございます。」
ボス 「データベースには登録できたのか?」
勝沼 「はっ!既に完了しております!」
ボス 「そうか。ご苦労。…では、車内に戻って話の続きだ…!」
勝沼・牧丘 「よろしくお願いいたします!」
つづく
…その後、この草ヒロは撤去されてしまったそうな。
撤去された後の風景をご紹介するお馴染みのコーナー:“その後の様子”は、準備中でございます。
もう少しお待ちくださいね。
「この物語、そしてこの物語に登場する団体・人物は全てフィクションだ。実在するものとは一切関係無いのだよ。」
「…ついに、ついに…ボスが復活されたんですね!本当に良かったです!」
「おいおい、喜んでもらえるのは嬉しいが、ちょっと大げさではないか?…ハハ…」
「とんでもない!ボス、本当にどうなってしまうのか心配だったんですから!早く物語の中でもボスにお会いしたいですね!」
「それはもうちょっと待っておくことだな…!」
「ハイ!」