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草ヒロ“撤去”物語(10)

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『草ヒロ“撤去”物語』について知りたい人はコチラ

『草ヒロ“撤去”物語3』の登場人物について知りたい人はコチラ

前回のおはなし

 

――山中たちは、ボスと落ち合う場所でボスの帰りを待っていた…――

 

山中 「…そろそろ待ち合わせの時間だ。ついに、ついにボスがいらっしゃる…!」

上田 「うー…!なんだかドキドキしてきましたよ~!」

秘書 「御快復した信濃様にお会いできると思うと、胸が躍りますね。」

 

……

山中 「…あっ!あれだ!塩山局のクルマ!」

上田 「おおーっ!」  秘書 「……っ!」

 

キンッ…!!

 

パタン…!パタムバン!!!

ボス 「フフフ…」

山中・上田 「ボ、ボスッ!!」  秘書 「信濃様っ…!!」

山中 「ご無事でしたか、ボス!!」

ボス 「フフ…私はこの通りピンピンしているよ…。」

上田 「本当に良かったです!…あ、あたし……なんて言ったらいいか…グスン…」

秘書 「信濃様がご無事で私は感無量でございます。…そして、塩山局の方々。信濃様をお助けくださってありがとうございました…!」

山中 「そうですよ!…本当に、本っ当にありがとうございましたっ!!なんとお礼をしてよいのやら…」

勝沼 「いえいえ。信濃様の為であれば、何だってやりますよ。私たちも信濃様がご回復されて本当に安心しております。…申し遅れましたが、私は塩山局長の勝沼と申します。以後、お見知りおきを。」

牧丘 「そして俺は塩山局所属の牧丘です。よろしくお願いします!」

秘書 「これはこれはご丁寧に。私は信濃様の秘書を務めさせていただいております、水篶刈男と申します。この度は誠にありがとうございました。」

山中 「俺は山中と申します!よろしくお願いします!」

上田 「そしてあたしが上田です!…牧丘さん、新人さんなんですね!あたしも新人だったのは割と最近だから、親近感湧きますよ!」

牧丘 「そ~ですか!まだまだひよっこの俺ですが、世のため人のため、日夜捜索・撤去活動に勤しんでいるつもりです!」

上田 「良い心がけですね!」

勝沼 「…皆様。積もる話もあって、まだまだお話したいところでございますが、本部の方々の探索をお邪魔するわけにもいきませんし、私たちはこれにてお暇させていただきます。短い間でしたが、またご縁がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いいたします…!」

ボス 「うむ。何かあったらいつでも連絡をくれ。協力は惜しまないからな。」

勝沼 「有難きお言葉、甚く頂戴いたします…!」  牧丘 「ありがとうございます!」

勝沼 「それでは皆様、お気を付けて!」

牧丘 「お元気で~!」

ボス 「おう、君たちもな。気を付けて。」

山中・上田・秘書 「ありがとうございました!」

 

バンパンタン!!

ブフゥ!!…ブロッロロロ

 

 

ボス 「…では、我々も出発するとするか!」

山中・上田・秘書 「ハイ!」

 

バムッタンタン!!

ボボッウ

 

……

山中 「…あの…ボス。」

ボス 「なんだ?」

山中 「電話でもお話したのですが、ボスにご報告しなければならないことがありまして…」

ボス 「ああ、そうか。なにか話したいことがあるんだろう?」

秘書 「ここは私からご報告させていただきます。」

ボス 「水篶が?」(ふむ…一体何だろうな…)

秘書 「…誠に申し訳ございませんが……実は私、信濃様のおクルマを破損、させてしまいました…。」

ボス 「な、なんだって…!?」(今まさに運転しているが、全然気付かなかったぞ…)

秘書 「大変申し訳ございません…!信濃様のおクルマを運転していながら、気の緩みを起こしてしまうとは…なんとお詫びしてよいのやら…。」

山中 「ボス!水篶さんをあまり責めないでください!」

ボス 「い、いや…。別にわt」

上田 「そうです!ぶつけたと言っても、不可抗力で、動物が急に飛び出してきてしまったのですから!」

山中 「ドライブレコーダーをご覧いただければお分かりになられます…!どうか御赦しを…!」

秘書 「……お二人とも…。私は…」

ボス 「なんだ…!そういうことだったか。…動物なら、それは仕方のないことだろう。」

秘書 「…し、信濃様…。」

ボス 「何も言うな。そんなものが急に飛び出して来たら私だって轢いてしまうさ。…ところでお前たち、ケガはないか?」

秘書 「ええ。皆さん大丈夫でした。」

ボス 「ならいい。それだけでも、水篶は運転手としての務めを果たしたというものだ。」

秘書 「…信濃様!ありがとうございます…!!本当にお心が広い…。」

山中・上田 「ありがとうございます!」

ボス 「いいさ。フーガも特に問題なく動いているしな。恥ずかしながら、異変には全く気付かなかったぞ。」

山中 「そ、そう言えばそうでしたね…。」

ボス 「ボディにも、よく見ないと分からない傷しか付いていないということだろうし。…まあ一応、ディーラーには持っていった方がいい。」

秘書 「仰る通りでございます。」

ボス 「…水篶よ。私も謝らないといけないことがある。」

秘書 「はい…?」

ボス 「私が過呼吸になっていた時、博司に何かを言おうとしたんだが、そのとき私の身体を思って、言葉を発するのをやめるよう…確か水篶が言ってくれたと思うのだ。しかし私は必死だったからか、ついお前に怒鳴ってしまった。…申し訳ない…。」

秘書 「……!…そういうことでしたか。いえいえ、そのようなことは微塵も気にしていませんよ。…こちらこそ、信濃様の御気持ちを汲めずに申し訳ございませんでした。」

山中 「やっぱりボスは心優しいお方だ!」

上田 「信濃国のように御心が広いですね!」

ボス 「…フフ。お前もそれを言うのだな…。」

上田 「はい?」

ボス 「いや。こっちの話だ…。クク…」(全く、可愛い部下たちだ…)

……

 

……

山中 「…おお!草ヒロですよボス!」

ボス 「早速のお出ましか…!」キキンッ…

山中 「かなり古そうな感じでした…クラウンかな…。」

上田 「クラウン…!?」

ボス 「ほう。それは期待だな…」

 

 

 

No.029
トヨタ クラウン
ジャマレベル:★☆☆☆☆(私有地の奥地にあり、なおかつ果樹園も広いですね。)
景観悪レベル:★★★★☆(ボディは錆び、ガラスは割れ、足回りは土の汚れも酷い。それだけでなく、近くを通る鉄道の車窓からも見えてしまう位置にあるため、観光客を失望させることは間違いないだろう。)
貴重レベル:★★★★☆(2代目クラウン自体滅多に見るもんではないし、まして草ヒロとなると非常に珍しい。…ただ、これは草ヒロとしてではなく、クルマ全体としてのレア度だから、★5つはつかないな。)
総合評価:珍しくて景観を悪化させる草ヒロなど、美味しすぎて撤去するに決まっているだろう!

 

山中 「凄い!やっぱり大物だ!…ボスと行動を共にした途端このような大物が見つかるとは!」

上田 「確かにクラウンですよね、あれ?」

ボス 「そうだな。2代目のクラウンだ。そして後期型だな。」

上田 「あたし初めて見ましたよ!高級車の草ヒロというのも、なんだかなぁって感じがします。」

山中 「ちょっと勿体無いよなぁ。」

秘書 「しかし、この状態ではレストアも不可能でしょうね。」

ボス 「だな。この草ヒロは、とっとと解体された方が幸せだ。こんなところで晒し者にされているよりもずっと幸せだろう。」

山中 「電車の車窓からも見えますしね~。」

秘書 「中央東線のようですね。」

ボス 「ククク…本当にいい草ヒロが見つかって私は嬉しいよ…。今の時点では近付くことが出来ないが、是非とも近くで見たいものだ…。」

上田 「ですね!山梨支部の方と合同で撤去作業するのもよさそうです!」

山中 「2代目クラウンの草ヒロなんて、二度とお目にかかれないかも知れませんしねぇ。」

ボス 「…では、出発するか。」

山中・上田・秘書 「よろしくお願いいたします!」

バムン!!バン!!ダン!!

ッブブフン…ブブブブ……ブボボォォンム…!!!

 

 

 

 

 

……

……

山中 「…それがですね、なんと俺たち、草研の新入りどもに遭遇したんですよ!」

ボス 「なんだと…!?」

秘書 「私がフーガを脱輪させてしまって途方に暮れているときに、高校生四人が現れて助けていただいたのですが…」

上田 「実はその子供たちが、草研の新入りだったんですよ!」

ボス 「そうか…。奇遇なことだが、敵対勢力に助けられてしまったか…。まあ、困ったときはお互い様だしな。…ところで草研の新入りとやら、その話を聞く限りでは、悪い奴ではなさそうだな。」

上田 「そうなんです。みんないい子でした~。ですがね、一人だけすっげー生意気な奴がいましてね。」

山中 「あー、あのオブさんとか言われてたメガネのオッサンくせぇヤツか!…アイツは要マーク人物ですよ、ボス!」

ボス 「フフフ…それは中々面白そうじゃないか。…そういえば、奴らがなぜ草研の新入りだと分かったんだ?初対面だというのに。」

山中 「…実はですね、一度別れた後、また遭遇してしまったんですよ!」

ボス 「何?それはまた凄い偶然だな…。」

上田 「しかも、運の悪いことに、草ヒロを撮影しているときに出会ってしまって…。」

ボス 「それで奴らの反応で草研だと分かったというわけか!」

上田 「そうなんです。」

秘書 「それで、大変申し訳ございませんが…前回や前々回の探索のように…2台いた草ヒロの内の1台を、撤去しないで保留しておくという約束をしてしまいました…。」

ボス 「うぐぐ…またか!!またしても…!」

山中・上田・秘書 「誠に申し訳ございません!」

山中 「俺たちの力ではどうしようもありませんでした!」

秘書 「お恥ずかしい限りでございます…。」

ボス 「もしや、助けてやったんだから草ヒロは見逃してくれ、とか言われたのか?」

上田 「そうなんですよ~。」

山中 「本当に小生意気なガキどもです…!」

ボス 「チッ……そうか、それは仕方が無いな。…水篶よ。お前の責任でもないし、無論山中や上田の責任でもない。ただただ運が悪かったというだけだ。くよくよするな。」

秘書 「…ありがとうございます…。先程から、信濃様に御赦しいただいたり慰めていただいたり…申し訳が立ちません…。」

山中・上田 「全くです…。」

ボス 「いや。…お前たちは、私がいなくても充分草ヒロを見つけてくることが出来たじゃないか!それだけでも凄いことさ。…これなら、私も安心して隠居生活を送ることができるよ…“あのお方”のようにな…。」

山中・上田 「ボ、ボス…!」  秘書 「信濃様…!」

ボス 「フフフ…もちろん、まだまだ現役で頑張るつもりだ!安心するんだな…!」

山中・上田 「ボスゥ~!」  秘書 「……!」

山中 「ボスがお元気でいるうちは、いや、ご隠居することになったとしても、ボスの背中を追い続けますよ!」

上田・秘書 「もちろんですとも!」

 

つづく(『草ヒロ“撤去”物語3』~The epilogue~へ)


 
…その後、この草ヒロは撤去されてしまったそうな。
ストリートビューより、“その後の様子”

驚きましたか?

汚らしくて景観破壊の一端を担う草ヒロを撤去しただけでなく、住宅街のエアポケットだった果樹園そのものを潰し、埋め立て、完全に更地にしたのです。これにより、更に住民を増やすことが出来、甲府の街に活気がより溢れることでしょう。

 


「この物語、そしてこの物語に登場する団体・人物は全てフィクションだ。実在するものとは一切関係無いのだ。だが、草ヒロは本当に撤去されたぞ…!」
「ついにボスとのご対面ですね!待ちわびましたよ本当に…!」

「そうだな。一時はどうなることかと思ったが、無事に草ヒロ探索を終えることが出来て良かった。」

「やはりボスがいらっしゃらないとなんだか締まりがありませんよ!草滅会本部はこうでなくっちゃ!」

「ククク…そうか。私は、私がいなくても充分やっていけると思ったがね。…ところで、『草ヒロ“撤去”物語3』は今回で最終回だが、『4』はどのような展開になることやらな…。」

「なにしろ本部に新入りが来るってことですものね!凄く期待していますよ。」

「本部に新入りが来るのはかなり久々だからなぁ。私もウズウズしている。」

「ボスもですか!来シーズン:『草ヒロ“撤去”物語4』の展開から、目が離せませんねぇ!」

「そうだな。…そして画面の前の諸君、再来週にお送りする『~The epilogue~』を読むこともお忘れなく…!ククク…!」

「読まなきゃお前の町の草ヒロ、撤去しちまうぞ~?」

「……。何を言うか山中…!誰かが読むか否かは関係ない。読んだとしても草ヒロを我々が見つければ、それを撤去することに変わりはないぞ!」

「はっ!大変申し訳ございません、ボス!軽はずみな事を口走ってしまいました…!前言撤回いたします!」

「うむ…。失言には気を付けるんだな。」

「心得ました…!」


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