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草ヒロ物語4(10)

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『草ヒロ物語』について知りたい方はコチラ
『草ヒロ物語4』の登場人物について知りたい方はコチラ
 

前回のおはなし

 

――草研ご一行は、パブリカバンとコロナバンという大物組ヒロを発見していた――

 

 

No.043
トヨタ パブリカバン700
1964~66年式
用途:物置 場所:果樹園
○ 博士メモ ○

なんと、初代のパブリカ、しかも700ccのモデルを見つけおった!

車種はともかくとしても、草ヒロとしての魅力が凄まじい個体じゃ!地面に半分近く埋もれたタイヤは草ヒロ歴の長さを物語っとるし、錆具合も少な過ぎず酷過ぎず、丁度良いあんばいじゃ。果樹園にある草ヒロにしてはこの状態の良さは珍しいと思うんじゃが、ドアが外れかけているのを見る限りは、ちゃんと風化が進行しているのが見て取れるのう。

うーむ。これは草研としての活動を再開して以来最も素晴らしい草ヒロと言っても過言ではないかも知れんのう。

 

 

No.044
トヨタ トヨペット・コロナバン
1964~66年式
用途:物置 場所:果樹園
○ 博士メモ ○

先ほどのパブリカだけでも垂涎物であったが、なんとこの果樹園には、もう一台パブリカと同じくらい草ヒロ学的に興味深く素晴らしい草ヒロが眠っておった。

流石のワシも、これには我を忘れて鑑賞してしまうわい。日焼けしたテールランプに、外れたヘッドライトが作るくらい表情、ボディが地面に触れるくらい埋もれた状態、車内には物が満載されて物置草ヒロとしてふんだんに活用されている様、外れたドア、ボンネットに積もった枯れ草…もう、見所を挙げればキリがないぞ!ホッホッホ!

文句のつけどころのない草ヒロじゃ!

最早、この二台だけは、草滅会の手にわたってはイカン!なんとしても草滅会に情報が漏洩することを防ぐのじゃ!

 

博士 「ホーッホッホ。最高じゃあ!長野県にはやはり見ごたえと研究し甲斐のある草ヒロがおるもんじゃのう!」

笛吹 「大収穫ですね~!博士!」

博士 「ウムッ、ウムッ!まったくじゃ…!」

笛吹 「ところで、レイレイや助手さんは…?」

博士 「そうじゃそうじゃ。…おい草川よ。この草ヒロについてワシと語り合おうでは…」

 

清里 「助手さん、ここで大気を追及しましょうか?」

助手 「う、うん。大気くんには申し訳ないけど、このままずるずると情報漏洩させるわけにもいかないし、疑心暗鬼な気持ちを持ち続けるのも精神衛生上よくないし、ここはひとつ、化けの皮を剥がしてやらなくちゃね!」

清里 「たぶん大気の方も勘付いているでしょうから、この草ヒロの情報を草滅会に送る…ということはしないでしょうけど…」

助手 「それでもやるしかない!」

清里 「そうですね…。ここは、昔からの仲だった僕が行きます!」

助手 「清里くん、ガンバって!頼れるのは君だけだ!」

 

笛吹 「…って、なんか二人でコソコソと話してるみたいですね。」

博士 「ほほう?後輩の育成かの。まったく熱心になことじゃて。ホッホホ。」

笛吹 (…雰囲気的に違うような…もっと険悪な不穏なことを話しているように見える…。博士は、素晴らしい草ヒロを目の前にして上機嫌になっていて気付いてないみたいだけど。。。)

 

清里 ザッ…「あの、大気…?」

東御 「お?どしたん玲?」

清里 「ちょっと…大事なお話があるんだけど…」

東御 「なんだよ~?改まっちゃって~!もっと砕けたカンジで行こうぜ~?俺とお前との仲なんだからよ!」(……な、なんだ…一体…?)

清里 「大気にこんなこと言うの、とっても辛いんだけど…」

東御 「…っ……。」(まさか…な)

清里 「キミ…草滅会から派遣されたスパイだよね?!」

東御 「なっ…!?」

笛吹 キョロッ「ええーっ!?…まさかっ、大気が!?」スタスタスタ…!

 

博士 「ホホー、この錆び方が堪らんのう…。それに、タイヤの埋もれ具合も標本にしたいほどの美しさじゃて!ホッホッホ!」[パブリカバンのすぐそばで観察しながら]

 

説明マン

「説明しよう!どうやら博士は、パブリカバンとコロナバン、2台の草ヒロのあまりの魅力に引き込まれ、周りが聞こえなくなっているようである!本来はシリアスな場面のはずなのに、まったく呑気なものだ!」

 

東御 「………、クククッ…ハハハッ…。一体何を言い出すかと思えば…。…そうだよ。俺はスパイだ。」

清里 「…大気!」(やった!正直に話してくれるんだ…!)

助手 「えっ…?」(いやにあっさり認めるな…)

東御 「だって、元々そういう体だったじゃねぇか。…俺が草研に入ったことを知らないマリから草ヒロの情報を得ることで、草滅会が得た草ヒロの情報を草研に横流しする、つまり草滅会へのスパイだってことだろ?当たり前のことを何を今更…」

助手 (なんだ…認めたわけじゃないのか。。。…にしても話のすり替えが上手い…さすがだ…)

笛吹 「あー、そーだったのかー!わたし、たいくんの目的スッカリ忘れてた~。アハハ!」

助手 (…って!笛吹さん単純すぎ!)

 

博士 「ホーホッホッホ!コロナもコロナでええのう。この外れかけたドアの美しいこと…。これぞ、草ヒロの美学にピタリ当てはまる個体じゃよ。ホッホッホ」[コロナバンのすぐそばで観察しながら]

 

助手 (博士も博士で完全に自分の世界に入っちゃってるし~!)

清里 「えぇーっ!違うよぅ!…僕が言いたいのは、大気は草滅会に潜入するスパイだってことじゃなくて、草滅会に潜入する草研から派遣されたスパイ…というふりをした、草滅会から派遣されたスパイだってこと!…要するに、二重スパイじゃないのかって聞いてるんだよ!」(やっぱり粘るんだね…)

東御 「…お、おいおい…。なにワケの分からないこと口走ってんだよ玲。くだらねぇ冗談はよせって。……あれかな?二日連続の探索で疲れてんじゃね、玲?…いやそれともあれかスパイ小説に今ハマってんのか?そんなら今度俺のお気に入りの小説貸してやるよー?」(焦るな…俺…。ここが演劇部の腕の見せ所さ!)

助手 (口数が多くなってる。さすがの東御くんでも、動揺してるのかな?)

清里 「冗談なんかじゃないよっ!……ホントは、僕…大気を追い詰めることなんてしたくなかったんだ!…っだけど、だけど……いつまでも、大気のことを疑いの目で見たくない!」

笛吹 「レイレイ…」

清里 「もしこれが、僕の勘違いだったなら、それは謝る!友達を疑ったわけなんだから!……でも、でもね…もし本当に、大気が草滅会のスパイなら、それを素直に認めてほしいよ!そして、一刻も早く、悪に染まった足を洗おうよ!今ならまだ引き返せるっ!」

東御 「ぐっ…ぐぐぐ…」(それなら証拠はあるのかと問いただしたい…だったら証拠を見せろと言い返したい…けどっ…何故だ…!?その言葉を…口から出せねぇ…!)クイッ

清里 「大気!目をそらさないで!僕の目を、ちゃんと見てっっ!!」

東御 「…うぅ…」(玲の丸くて大きな、澄み切った瞳なんかで見つめられたら…悪あがきもできねぇじゃねぇか…クソッ…。俺は…悪にもなりきれねぇ…所詮は半端モンなのか…クソッ…!)

笛吹 「たいくん…」

助手 (清里くん!頑張れ!東御くんも、素直に罪を認めるんだ!)

清里 「……大気。この状況、僕が言いがかりをつけているだけだしね…。ずーっと黙りっぱなしなんだったら、仕方ない…。……こうなったら、最後の手段として…ゆうと小布施先輩と、もう一人の先輩に電話して…。し、証拠を…証拠を、突き付けて、もらう…よ…?」

東御 「…………。」

清里 「で、でも!本当は僕はそんなことをしたくない。だって僕と大気は大事な友達だもん!追い詰めて逃げ場をなくして、無理やり罪を認めさせるなんてしたくない!」ジーッ…

東御 ジーッ…「……………。………そう、か…。…やっぱり、本当に証拠があるんだな…。分かったよ、玲。……本当にすまなかった…玲。」

清里 「大気…!………ありがとう…!…君なら、僕の説得に応じてくれるって、信じてたよ!」

助手 「おおぉ!よかったね、清里くん!」

笛吹 「私も嬉しい!」

東御 「…嬉しいってなぁ…」

清里 「そうだ大気?僕に謝ってほしいわけじゃ、ないんだよ?」

東御 「……そうだな…。………綾、そして助手さん…。草研に協力するふりをして、実は草滅会に君たちが見つけた草ヒロの情報をこっそり横流ししていたのは……紛れも、ない……この、俺です!……本当にごめんなさい!」

笛吹 「そういうことだったの…。たいくんがそんなことするなんて…」

東御 「…そんな卑怯なことはせずに……自分の力で、草ヒロを探すべきでした…!俺が…俺が、間違っていました…!玲や綾とは友達なのに…取り返しのつかない裏切りを…」

笛吹 「そんなそんな…大げさに謝らなくても…。」

助手 「そうだよ。ボクは、東御くんが罪を認めてくれただけでも嬉しいんだ。よく正直に話してくれたね、東御くん。」

東御 「綾…助手さん…本当に…本当に…いい人たちで…なんか、スミマセン…!」

助手 「たぶん、草滅会のスパイになったのも、何か事情があったんだよね。」

笛吹 「確かに、どんな事情があれ、悪事に手を染めるのは許されることではないんだけど、今回の一件は、罪を認めて、もう二度としないって誓ってくれれば、わたしはそれでいいかな~。」

清里 「うん、僕もそう思う!」

助手 「…ボクは、君たちの何倍も草ヒロが大好きだと自負しているけど、撤去されるのも運命の一つだと受け入れるから大丈夫。…その儚さが、草ヒロの魅力の一つでもあるのは、否定できないからね!」

笛吹 「おお~。助手さん、人間ができてる~!」

助手 「いやいや、当然だよ…ハハ…」

清里 「あっ、そういえば博士は…?」

東御 「そうだ…博士にこそ謝罪しなくては…」

 

博士 「ウホホホッ…何度見ても堪らんのう…この埋もれ具合にヤレ具合…。当時の様子が色濃く察知できる車内…。それに、二台絶妙な距離感を保って草ヒロになっとるのも最高じゃ!組ヒロは、こういうところが魅力的じゃのう…。錆具合の違い、埋もれ具合の違いを考えてみるのも楽しいわい!…草ヒロ探索者冥利に尽きるとはまさにこのことじゃ…!」[パブリカバンとコロナバンを交互に鑑賞しながら]

 

清里 「あー、後にしよっか、大気?」

笛吹 「アハハ…博士はほんとに草ヒロが好きなんですね~笑」

助手 「あっは、まあね。。。笑」

東御 「雰囲気ぶち壊すのも嫌だし、存分に堪能させてから謝罪するのがよさそうだな、玲。」

清里 「そうだね笑」

東御 「あと、俺がこんなことをしたきっかけも話さないといけないしな…。博士も戻ってきて、みんな集まってからもう一度謝罪と事の発端を説明するよ…。」

清里 「おっけー!」(そうだ!ゆうに一件落着の連絡しとこーっと)

 

 

――その頃、飯田と小布施と小布施の同期の協力者は、笑学の近くの喫茶店にて、清里からの応援を待っていた――

 

前回のおはなし

 

飯田 「先輩、たった今きよから連絡が来たんですけど…」

小布施 「おおっ!ついに応援要請か!?動かぬ証拠を突き付けて、メッタメタのギッタギタにしてやろうぜ裏切り者めがぁ!」

飯田 「いや、それが…。東御はあっさりと罪を認めたらしく…」

小布施 「アァ~ッ!?なんだよそれ~!クソつまんねーじゃん!」

? 「そうか…それは残念だね。せっかくこの僕が東御くんと草滅会が繋がっているという証拠をtwitterから特定してあげたのに…。僕の努力を無下にするなんてひどい後輩だ。」

飯田 「いやいや上野原先輩、それは言い過ぎですよ。きよが説得に成功できたのも、先輩たちが一生懸命頑張ってくれたおかげですよ。」

小布施 「ほんとか~?いい感じに丸め込もうとしたって無駄だぞ!」

上野原 「だぞー?」

飯田 「そんなんじゃないですよ。…だってほら、もし小布施先輩が上野原先輩を呼んでいなければ、証拠を発見、確保することはできなかったでしょうし、もし上野原先輩が証拠を突き止めていなかったら、きよは本気で東御のことを説得できなかったと思うんです。」

小布施 「むう…そう言われるとな…。」

上野原 「フフン、確かに、確固たる証拠もなしに人を追及したとしても、ハッタリだということが、勘の鋭いコだと簡単にバレてしまうリスクはあるよね。飯田クンの言うことも一理あるじゃない。…キミの友人のこと、悪く言って悪かったね。」

飯田 「いいんですよ。分かってくだされば。…とにもかくにも、穏便に解決できて、まあ良かったんじゃないですか?…情報を流していたという裏切り行為は、“俺は”許すつもりないですけど。」

小布施 「全くだ…!アイツのことぜってー許さねーよ、俺も。……けどよ飯田おめぇ、穏便に解決できて良かったって言ったけど、それは良くはねぇよ。」

飯田 「うーん……。変に争い続けるよりは、まだマシじゃないですかね?」

小布施 「いーや!ダメだ!このままアイツが何も罰を受けないなんて、俺の腹の虫がおさまらねェ!…どーせなら、証拠を突き付けてから土の上で土下座させてやりたかったんだけどなァ…。そんで頭を靴で踏んづけたりしてよォ…。カカカッ!」

飯田 (何もそこまで…。やっぱりとんでもねぇサド野郎だなコイツは…)

上野原 「小布施クン、キミも相変わらず頑固というか、乱暴というか…タカ派だよねェ~。」

小布施 「フン、余計なお世話だ。」

飯田 「タカ派か…フフッ…確かに…」(なら、許すって言ってたきよはハト派だな)

小布施 「あー!今笑ったな!飯田めーっ!」

飯田 「あー、スミマセンスミマセン先輩!」

小布施 「スミマセンは一回でいい!」ペシィ!!

飯田 「痛っ。もう、何するんですか…!?ほんと乱暴者ですね!」

上野原 「フッ…。…じゃあ、僕はこれで帰るから。お疲れー。あとはお二人で仲良くしててねっ?」

小布施 「ご苦労だったな上野原。」

飯田 「あっ先輩、お疲れ様です…。今日は、ありがとうございました…!」(“お二人で仲良く”ってなんだよ…。…ていうかこの先輩は色々と謎だな~。しかし、そんなミステリアスさも魅力的ではある…。割とイケメンだし、意外とモテたりして…。)

 

つづく(『草ヒロ物語4』~The epilogue~へ続く)

 

 

「この物語と、この物語に登場する団体や登場人物は、全てがフィクションじゃぞ。実在するものとは、一切関係ないぞい。」
「いや~、この展開には驚きましたよ博士!…と言いたいところですが、東御くん最初っからな~んか胡散臭かったし、東御くんが二重スパイだったと予想していた読者の方も多そうですよね?」

「そんなのワシゃ知らん。」

「そんなテキトーに答えないでくださいよ~。」

「なにゆえ東御がそんな怪しまれるような振る舞い方をしていたのか…その理由はなんじゃろうな。」

「それは…ただ振る舞い方が下手くそだったってだけで…」

「どうなんじゃろうな。もう少し物語を読み進めていけば、その辺の謎も明らかになるんじゃないのかのう。」

「…そんなこと言っても、もうエピローグしかありませんよ?…まあ、“撤去”物語も含めたら第10回とエピローグがまだ残ってますけど…。」


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