ホンダ LM700
1965年式
ホンダコレクションホールにて 2013年4月29日撮影
ホンダがかつて、軽ではない商用車を発売していたことを、皆さんはご存じだろうか。
・・・ホンダの乗用車生産が始まって間もない頃、市場開拓を模索するために作れるものは取り敢えず作っておこうということで、各社の激戦区だった小型のライトバン市場に参戦することにしたのです。
その第1弾がL700。展示車両は、上級仕様のLM700でした。
ホンダのスポーツカーであるS600をベースに開発されたというL4DOHCエンジン(型式:L700E)を積み、フロントサスはストラット式を採用するなど、当時の商用車にしては異様にオーバークオリティで設計されました。
それが当時のユーザーに敬遠されたのか、そしてホンダのブランド力が今に比べて低かったこともあってか、全くと言っていいほど売れずに惨敗・・・!MCで700ccから800ccに排気量UPさせ、L800として発売するも焼け石に水・・・。
トヨタのパブリカバン、マツダのファミリアバン、ダイハツのコンパーノバンなどといった強豪が犇めき合う1000cc未満クラスの小型ライトバン市場からの撤退を余儀なくされました。
また、L700やL800はそのクルマのジャンル上、後年まで大事にされるということはなく、貴重なアルミを用いた部品が多く使われていたり、S600やS800の部品取りにも使えることから、廃車になったものは部品取りとしてほとんど解体されてしまったらしく、現存数は一桁レベルと言われています。
実際、僕もここ以外でL700あるいはL800を見たことがありませんし、草ヒロとして残っている情報もほとんど聞いたことがありません。見つけたら大発見と言っても過言ではないでしょう。
ちなみに、ピックアップトラックのP700/P800というのもあり、それもLと同等かそれ以上に珍しいです。
L700/L800が売れずに一時小型ライトバン市場から身を引いたホンダでしたが、どうしても諦められなかったのか、数年後にはシビックにバンを設定します。シビックは言わずと知れたホンダの救世主ですので、そのバンモデルも結構売れました。それに味を占めたホンダは、3代目シビックからはシビックシャトルをベースにしてシビックプロと改名し、独立した車種として目立たせることにしましたが、他社の強力なライバルの存在もあってか徐々に売れ行きが落ちてきます。
そこでシビックプロは廃止。小型ワゴンのオルティアをベースにパートナーという名で発売するも、元々オルティアがパッとしていなかった上に、普通商用車においてはブランド力皆無のホンダ製ということもあって救世主にはならず。
2代目へのFMCでエアウェイブをベースにして売り出すも、オルティアと同じくベース車両もパッとしなかったこともある上に、やはり普通商用車においてはブランド力皆無のホンダ製ということもあってこれも売れず。
この事態を見かねたホンダは、普通商用車市場からは完全撤退。エアウェイブ後継のフィットシャトルをベースにしてフィットプロを作る気は、もうなかったようです。
そんな悲しい歴史を持つホンダ製普通商用車。何とかして売ってやろうという、ホンダの企業努力には涙ぐましいものを感じます・・・。その頑張りは、シビックバンの時を除いては一度も報われなかったようですが・・・。
やはりブランド力というのは大事だと思いました。会社の社用車として使用されることの多い普通商用車なんかは特にそうだと思います。
ホンダコレクションホールの展示車両の紹介は、この回をもって最後となります。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
来週は、番外編として道中で発見したキリスト看板を紹介しますので、興味のある方はどうぞご覧下さいませ。