マニアックエリアのクルマたちも、残すところあと2台!
残りはあまりに貴重なクルマなので、一台一台丁寧に紹介していこうと思います。
まずは、あの赤いクルマから紹介しましょうか。…あのクルマの名前、そしてメーカー名…皆さんご存知ですか?
マツダ B1500 トラック(BUB61)
1962~65年式
福山自動車時計博物館にて 2013年8月5日撮影
マツダが製造していた、B1500という名の小型のボンネットトラックでした…!
マツダの小型ボンネットトラックというと、比較的最近まで販売されていたプロシードを思い浮かべるかと思いますが、プロシードのご先祖様にあたるクルマなので、プロシードと呼んでも強ち間違いではありません。
プロシードは初代モデルでも現存が割と確認されていますが、ことB1500においてはこの1台以外現存が確認されていないという、大変貴重なクルマです…!その貴重さたる所以、大多数のB1500が処分されたというよりは、元々売れなかったクルマといった方が正しいと思われ…。恐らく、マツダのブランドが確立する以前のモデルなので、トヨタや日産といった強豪メーカーに圧されて影が薄かったのでしょうね。
現存はこの一台ということで、このクルマを見たければここを訪れるしかありません…!このクルマを見るためだけに、福山自動車時計博物館を訪れるというのも大いにアリでしょう。
初めて紹介するクルマということで、B1500について事細かに解説していきます。
B1500は、当時激戦区だった1t積ボンネットトラック市場に参入するために、D1500のエンジンを改良して1961年に発売されたクルマ。やはりライバルのダットサンやスタウトなどは想像以上に強力で、マツダのブランド力のなさも相俟ってほとんど売れず。1962年にMCが施されるも、増強に至らず、1965年に後継のプロシードにバトンを渡して短い4,5年の生涯に幕を閉じました。
売れなかった原因は、メーカーの知名度もあるとは思いますが、同クラスのトラックの中では割かし高価であったことと、フロントサスに不具合が生じていたということも、原因の槍玉として挙げられているようです。
メカニズムについてですが、心臓部には先述したようにD1500のエンジンを改良したものを搭載。
1484ccの水冷四気筒OHVエンジンを心臓とし、最高出力は4600rpmで60psを発生。これは同クラスのトラックとしては最大級で、高価になってしまった原因は、この高性能エンジンの搭載によるもののようです。来る高速化時代に合わせて、ベースとなったD1500よりもハイギヤードなセッティングがなされており、最高速度も110km/hと、当時の高速道路を走るには申し分ない性能でした。
車重は1125kgで標準的、ミッションは4速コラムMTが採用されています。この辺は商用車そのものといった感じですね。
デザインは、ニューラインやジュピタージュニアを彷彿とさせる形状のライトベゼルやライトの配置が特徴的で、かなりアクの強い顔をしています。やたら大きいグリルもあって、一度見たら忘れることはなさそうです。
…とはいえ、60年代のクルマにしては珍しく、エッジの利いたフェンダーが装備されており、それと荷台へと伸びていくシャープなプレスラインは、クリスタルラインと称され、中々美しいと言えるデザインを纏っています。
1962年にMCしたと先述しましたが、その大きな違いはグリルにあります。例えばこの個体は逆台形のグリルですが、これは後期型。前期型は台形のものが採用されています。細かな違いとしては、サイドマーカーの有無。この個体にはサイドマーカーが装着されていますが、前期型には付いていません。
また、売れなかった割には無駄に豊富なボディラインアップが展開されていました。1962年のMCで一気に増えたようで、このトラックに加えて、ダブルキャブ、ライトバン、ピックアップの3種のボディが追加されました。もちろんいずれも現存は確認されておらず、トラック以上に珍しいクルマと言えるでしょう。
解説は以上です。
…しかしまあこの個体、見ての通りボロボロのグサグサで、ヘッドライトやエンブレムなどは欠落し、フェンダーは大きく凹んでいます。このブログを見ているような方たちにとっては、このようなクルマの壊れ方はよく見られるものですよね…?!
…お察しの通り、このB1500は広島で草ヒロになっていたものを、福山自動車時計博物館がサルベージし、一時保存しているという経緯をもつ個体なのです。
このB1500が本当にこの世に現存する最後の一台なのかは分かりませんが、もしそうだとすれば、解体屋に引き揚げられて鉄屑にされるという最悪の運命からは逃れられることが出来たということになります。もしこれが最後の一台だとすれば、新品のような綺麗な状態に復元するのは、欠品があるということもあり困難を極めるでしょうね…。
まあでも、こんなに貴重なクルマを見ることが出来て、とってもよかったです!
次回は、B1500の奥にいる不穏な空気漂うクルマをご紹介。貴重さはB1500ほどではないものの、マイナーさでは
メーカーという観点を入れるとB1500を遥かに凌駕するかと思います。