『草ヒロ物語』について知りたい人はコチラ
『草ヒロ物語3』の登場人物について知りたい人はコチラ
――B360を撮影後、小布施ご一行は、広域農道の大橋を渡っていた…――
笛吹 「おぉーっ!すごーい!高ーい!」
清里 「綺麗だね~!でもちょっと怖い~…。」
小布施 「おい!!どこ見てんだよオメェら!」
清里 「えぇ!?」 笛吹 「へ?」
キンッ!!
小布施 「ホラ!…あそこだよ!草ヒロがあるじゃねぇか!二台も!」
清里 「……。…うわ~っ!ホントだ!」
笛吹 「全然気づかなかった…!」
飯田 「そりゃお前ら景色見てたからなぁ。…まあ、こんな高い橋の上だと注意が逸れるのも分かるが…。」
清里 「でっしょ~?」 笛吹 「エッヘン!」
飯田 「得意気になんな…。」
小布施 「でも、俺たちは草ヒロ探索に来てるんだからな。気を抜くのはご法度だぜ?」
清里 「すみません、ブッセさん…。」 笛吹 「オブさんごめんなさーい…。」
小布施 「まあいい、とにかく急ごうぜ!」
飯田 「車種が気になりますね。」
小布施 「そうだな。軽トラとセダン…ふむ。何だろうな…。」
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No.031
日産 サニー
1973~77年式
用途:物置 場所:果樹園(ブドウ)
○ 小布施メモ ○
電気が流れる柵に囲われた果樹園内にいたものだ。
草滅会に撤去されることになってしまったサニーと同じく、顔はゴッソリなくなっている。やはり農薬の影響で錆が広がっていき、グリルを固定しているパーツが腐食してしまうことで外れてしまうのだろう。
草滅会はともかくとして、電気柵に守られている以上は動物や一般人によって草ヒロが荒らされることはないと思われる。あとは自然に朽ち果てるのを身に任せるだけだろう。さっきも飯田と話したが、これこそが草ヒロの醍醐味なのだ。
笛吹 「凄い錆びてるね~。」
清里 「まるで牛さんみたいな錆び方だね!」
飯田 「果樹園では、『スプレイヤー』という機械を使って農薬を霧状にして散布するから、クルマには農薬がまばらに付着するんだ。」
小布施 「…だから、こういう錆の広がり方をするってわけだな。」
清里 「へぇ~…」
笛吹 「ゆうくんにひたすらに関心…。」
清里 「ちなみに車種はなんだろ?」
飯田 「これはサニーだな。」
小布施 「さっき見つけた緑色のサニーと同じモデルだろ?」
飯田 「違います。あれは上級仕様のエクセレントですよ。これはただのB210サニー。」
小布施 「そうそう、そういうことだ。俺が言いたかったのは!」(あの緑色のヤツ、サニーエクセレントっていうのか…。悔しいが、違いが分からねェ…。)
飯田 「……。」
清里 「道路からは見やすいけど、入口に電気の柵があるから、これは撤去される心配はなさそうね。」
小布施 「どうだろうな…。ただの解体屋なら諦めるかも知れねぇけど、あいつら…草滅会だったら強引に撤去しそうだな…。」
飯田 「ええ、先輩のご推察通りです。草滅会は草ヒロを撤去するためなら何でもやる組織ですから。やってることは半分犯罪行為ですよ。しかし、景観を守ったりゴミを処理してくれるからということで、草ヒロの所有者以外からは大目に見られているようですが…。」
小布施 「草ヒロの所有者は、やっぱり納得してねぇってことなんか。」
飯田 「ところが、全員が全員そうっていうワケでもないんですよ。強引に撤去する場合を除いて、草ヒロの所有者側も有難がっていることも多いんです。解体屋とは違って無料で引き取ってくれますから。…無料で引き取ってほしいがために、草滅会に直接依頼したり、ネット上にあえて草ヒロの場所をそれとなく公開することで、勝手に撤去させるという方法を取る人もいるようです。」
小布施 「なるほどなぁ…。世の中には色んな人間がいるもんだ。」
清里 「ゆうって草滅会についても詳しいんだ…。草ヒロのことなら本当に何でも知ってるって感じだね!」
飯田 「ふふん、まあな…!」
笛吹 「もしかしてゆうくん、草滅会から派遣された“スパイ”なんじゃね!?」
飯田 「ハァ?なんでそーなるんだよ!ちげーよっ…!」
笛吹 「アハハ!ゴメンゴメン!冗談だよ~。」トントン!
飯田 (うっ…///)
清里 「スイちゃんったら、スパイ映画の見過ぎ!」
小布施 「…でも、いずれこのまま草滅会と対立を続けていくと、スパイを派遣されるときが来るかもなァ…。まあ、別に和解する気もないが。」
清里 「…えっ!?ブッセさんまで!?」
笛吹 「オブさんもやっぱそう思いますか~?…時代は“スパイ”ですよね!やっぱり!」
飯田 「…やれやれ…。くだらないことを言ってないで、向こうの軽トラも見に行こうぜ。」
笛吹 「アハ!そうね!いこいこー!」
清里 「おー!軽トラ~!軽けいトラとら~♪」
小布施 「おい待テェゴルァ!」
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No.032
ホンダ TN-7
1975~77年式
用途:遊び 場所:果樹園(ブドウ)
○ 小布施メモ ○
今日最初に見つけた草ヒロと同じ車種だ。山梨県はやはり草ヒロが多いということを改めて実感した。地元ではこんなクルマ一度も見たことがないというのに、午前中だけで2台も見つけてしまうとはげに恐ろしき。
ボロボロなのに無理くり物置として活用されていた黄色い個体とは違って、こいつは遊んでいるようだった。状態が良いクセして呑気なもんだな。…まあ、トラックだから物置に使おうにも使えないのかも知れないが…。
P.S.
とりあえず3台の草ヒロについてメモを書いてみた。結構面白いし、また次の探索に来た時に書かせてもらおう。だが、今回はもう書くのは終わりにする。あとは清里か笛吹に書いてもらうことにするか。
…飯田は別にいいだろう。あいつは草ヒロについてはベテラン。正直俺よりも知識があるようだし…。奴はこれ以上草ヒロについて見識を深める必要はないということだ…!
笛吹 「あー!!これ、今朝博士たちと見に行った草ヒロと同じじゃない?」
清里 「そうだよねぇ!ライトが縦に二つ並んでるし、同じだと思う!…ね?ゆう!」
飯田 「そうだな。軽トラで縦目ライトのものは、これとこれの旧型のTN-Ⅴって名前の奴だけだ。さすがにお前らも覚えたみたいだな。」
笛吹 「うん!こんくらい面白い顔のクルマだったらすぐ覚えちゃうよ!」
清里 「こっちはさっきのクルマよりも綺麗だね!」
小布施 「果樹園の中にあったサニーとは違って、こっちは果樹園の脇にあるから、農薬が付着しにくいんだろうな。」
清里 「それで錆が少ないんですね!」
小布施 「その通りだ。」
飯田 「…いやぁ、サニーは草滅会に奪われてしまいましたけど、近くで2台も草ヒロを見つけられると、ちょっと救われた気分になりますね。」
小布施 コクッ…「しかし、広域農道から見えやすい場所にあるから、アイツらが見つけていたとしてもおかしはくないな。」
飯田 「ですね…。こればっかりは見つかっていないことを祈るばかりですよ。」
清里 「…でも、今僕たちがこうしてこの草ヒロ達を見ることができてるってことは、それまでは草滅会に発見されていなかったってことだよね!」
飯田 「まあ…そういうことになるな。」
清里 「それって結構キセキだと思うんだ!…まあ、だからといってこれからも見つからないとは限らないんだけど…。」
笛吹 「レイレイ…そーゆーポジティブなところがステキ!」
飯田 (お前も充分ポジティブだろ…)「…だな。現実はどうなるかは分からないとはいえ、そう考えておいた方が幸せかもな。」
小布施 「良いこと言ったぞ!清里!」
飯田 「……!そうだっ…!草滅会の本部は、最近探索の成果をネットにあげてるんだった。」
清里・笛吹 「えぇー!?」
小布施 「そうだったのか…!」
飯田 「そうです。支部はシークレットにしているのですが、本部の連中、つまりさっきの奴等が見つけた草ヒロは、士気を向上させるためか公表しているんですよ。草ヒロ好きを挑発しているのかも知れませんが…。」
小布施 「…で、それがなんだってんだよ!」
飯田 「ですから、この草ヒロ達が見つかったかどうかは、奴等のサイトを見れば分かるってことですよ!」
小布施 「なるほど、そうか…!」
清里 「探索レポートに、この草ヒロ達が無かったら、見つかってないってことで…ってことは撤去されないってことだもんね。」
飯田 「うん。…まあ、山梨支部の人間が見つけている可能性は否定できないから、絶対ってわけじゃないけどな。」
笛吹 「…じゃあゆうくん!そのサイトみんなで共有しよーよ!わたしグル作っといたからさ。みんな招待してあげるね。」
飯田 「は?…グル?…まったく仕事が早いなぁ、笛吹は…。」
笛吹 「えへへ…すごいでしょーっ!?」
清里 「流石だねスイちゃん!個チャだとやりとりが大変だし、グルを利用するのはいいと思うよ!」
笛吹 「エッヘン!レイレイに褒められちゃった~♪」
小布施 「オイオイ、俺はよ?…俺、テメェのLINEもってねぇよ?」
笛吹 「あー、そうだっ!オブさんのこと招待するの忘れてた~ハハッ!!」
小布施 「ったくよぉ~」
飯田 (綾らしいな…。こういうちょっとドジなところ…)
小布施 「じゃあ交換しようぜ。俺がコード出すから、笛吹が読み取って友達追加しろよ?」
笛吹 「ハイハイ。分かってますって~」
小布施 「『はい』は一回だ!」
笛吹 「は~い…。」
笛吹 「追加して招待しときましたよ!これでグルに招待されているハズです。」
小布施 「おう!きたきた。……よし、入ったぞ。」
笛吹 「ありがとうございます!…これで、『草研高校部』グルのかんせーい!」
清里 「なんだか僕たち、より一層キズナが深まったというか、仲間になったって感じがするね!…それに、ブッセさんみたいな面白い先輩とも交流できるし、これで草ヒロに関する情報が共有しやすくなりますね。」
小布施 「おい清里、『お・も・し・ろ・い』…ってどういう意味、だ…?」ポキ…ポキ…
清里 「ひ、ひぇ~っ…!な、なんでもありませんよ…?」
笛吹 「レ、レイレイ!次の草ヒロんとこ…行こ行こ!」
清里 「うんうん!早くしないと博士たちに先越されちゃうしね~…ハハ…」
小布施 「おい待てゴルァァ!!」
清里・笛吹 「ひぇぇぇ~っ!!」ピューッ!!
飯田 (やれやれ…あいつらは…。…しかし、草ヒロに熱心であるはずの俺なのに、LINEグループを作るという発想は全くなかったな…。草ヒロ好き同士でそういうグルを作っておけば情報の共有もできるし、探索の計画や待ち合わせなどのスケジュール管理・確認にも便利…。草ヒロにはそれほど興味がないきよなのに…。こういう柔軟な発想は見習わないとな…。……っと、俺も行かなきゃ置いてかれちまう…!)
つづく(『草ヒロ物語3』~小布施チーム編~へ)
つづく(『草ヒロ物語3』を通して読みたい方はコチラ)
「この物語、そして物語に登場する団体・登場人物は、全てフィクションじゃ。実在するものとは一切関係ないからの。…と言えど、実は草ヒロは実在するんじゃ。もしかしたら撤去されちょるかも知れんが、試しに読者の諸君も探してみるといいぞい!」