助手 「しかしまぁ、あんな適当に走ってても放置車なんて見つかるもんなんですね~。山梨や長野ならまだしも、こんな町で。」
博士 「そうじゃな。・・・草滅会のヤツらが、この穴場を発見していないと良いんじゃがのう。」
見習い 「あ、博士!一瞬、駐ヒロのようなのが!クルマを止めて下さい!」
博士 「了解じゃ。・・・後続車にも気を付けんとな。」
見習い 「そーいえば・・・、駐ヒロの前に人が3人程いたような・・・。」
博士 「大丈夫、大丈夫じゃ。ま、草ヒロを撮るなんて、一般人からしたら奇怪な行動じゃろうが、研究のためには、このくらいの恥はかいておくべきじゃ。その人が偶然にもオーナーさんじゃったりすると、案外面白い話を聞ける時があるらしいのじゃぞ。許可もとれて心置きなく撮影できるしな。」
見習い 「でも博士、その人達、クルマの前でかたまってましたけど?」
博士 「何・・・?もしかして同業者か。なら尚更好都合じゃないか。さあ、行くぞ。」
博士 「む・・・、確かに人がおるが、黒スーツとは怪しい出で立ち・・・。まあ、一般人からしたらワシらも同類じゃろうが・・・。ん・・・、いや、あいつらは・・・!」
助手 「博士、ご存知なんですか?」
博士 「草滅会じゃ!」
助手&見習い 「えぇ~!?」
博士 「ちょっと待て!」
No.006
スバル ヴィヴィオビストロ660
5ドア(E-KK3)
と
トヨタ エスティマエミーナ2.4
Xミドルルーフ(E-TCR10G)
用途:遊び 場所:駐車場
博士メモ:何だかコメントしにくいのう。このクルマ達には別に思い入れも無いし・・・。これだったら別に草滅会に・・・いや、何でもないぞ!草研の所長として、何としても草滅会から守り抜くのじゃ!
ボス 「ん、・・・誰だ!?」
博士 「徹・・・ワシじゃ、博司じゃよ。」
ボス 「フン、お前か。懐かしい顔だぜ・・・。しかし、まさか草研も今日、しかもこの町を探索していたとはな・・・。恐ろしい偶然だ・・・。」
見習い 「え!?もしかして、この人があの悪しき草滅会のボスゥ!?」
ボス 「・・・悪しき言うな!」
上田 「しかも、草研の所長とボスが知り合いだったなんて!」
山中 「まさかボス、旧友のアイツって、このジジイなんですか!?」
博士 「ジジイ言うな!」
ボス 「・・・そうだ・・・。私と草研の所長、つまり博司は昔は親友だった。嘗て一緒に・・・草ヒロを探しまわったというのも本当だ。しかし、博司は草ヒロ好きのままで、私は草ヒロを憎む人間になったのだ。それも、あのお方がいらっしゃったおかげ・・・。私はそれで良かったと思っている。・・・ま、その話はまたいつかしてやろう。」
見習い 「あのお方・・・!?ボスより更に上の人がいたなんて!」
ボス 「とにかくだ、この2台は私がもらった。そして鉄屑にするのだ!」
助手 「・・・な、な、な、・・・何でそんなことするんですか!?」
ボス 「何故かって?・・・そもそも、草ヒロに対する世間一般の評価はどうだ?汚らしい、怖い、ボロい、見苦しい、ただのガラクタ、産業廃棄物、治安悪そう、景観破壊要因等々・・・、そんなネガティブな印象しか持たれないのだよ!・・・我々草滅会は、社会に貢献するために草ヒロを撤去するのだ・・・。私の言っていることは間違っているか!?」
助手 「うっ・・・、確かにそれは・・・。」
山中 「ボスの仰る通りだ!クルマを放置しておくと、イタズラするやつが現れ、落書きされたりガラスを割られたりするし、そこからその草ヒロのある町は、管理が行き届いていないという印象を持たれ、更に悪い奴が集まり、更に町の治安が悪化していく・・・。割れ窓理論を知らないのか!?」
見習い 「・・・確かに、聞いたことはあります・・・。」
上田 「それに、放置されたクルマのバッテリーの化学物質が流れ出して、土壌汚染に繋がったりもする!それにクルマには鉄やアルミニウムといった、再利用できる貴重な資源が沢山含まれているの!そんな貴重な資源を役に立たせずに朽ち果てさせることがいいとは思えないわ!」
博士 「・・・確かにオヌシらの言う通りじゃわい。じゃから、写真を撮って確保したものは撤去するなりなんなり、オヌシらの好きにするといい。じゃがな、草ヒロというのは立派な一つの趣味でもあるのじゃ。ワシらのように、こういうものが好きなモンがおる以上、楽しむのも人それぞれじゃろう。しかも、クルマを果樹園や畑、自分の駐車場などに放置するのは、ただ捨てたというだけの理由かも知れんが、惜しくて捨てられない、売れないという理由もあるんじゃないのかのう。長年乗り続けてきたクルマとの思い出は数知れず。そんなクルマと離れ離れになるのが嫌だから、草ヒロとして置き続けているんじゃないのかのう。それに、ポイポイ廃棄するのは勿体無いから、まだボディが丈夫な内に物置として使っとる、というケースも多々あるはずじゃ。・・・・・・まぁしかし・・・公道上や公共の駐車場にある、迷惑な不法投棄車両なんかは完全にオヌシらの言う通りじゃがな・・・。」
ボス 「そうだろうとも!だが博司・・・お前の言わんとすることも多少は分かった。多少だぞ。・・・それに、このエスティマに関してはもう、写真も場所情報も私の秘書に送っちまった。」
上田 「ええ。ボスの仰る通り、エスティマは送りましたが、ヴィヴィオはまだです・・・。」
ボス 「だろう。だから、ヴィヴィオはお前らの好きにするといい。・・・強運に感謝しな!私はエスティマだけ持っていく。それでいいだろう?」
博士 「・・・うむ・・・分かった。まぁ、今回はそれでいいじゃろう。」
ボス 「流石は博司、話の分かる男だ。この私の旧友だけのことはある・・・。」
博士 「オヌシもじゃよ・・・徹。」
ボス 「・・・では、我々はここから立ち去るとしよう。お前達、行くぞ!」
子分達 「ハイ、ボス!」
博士 「・・・じゃ、ワシらも写真を撮ったら行くとするかの。」
助手 「それにしても、考えさせられましたね。撤去する側にも撤去するなりの理由というものがあるんですね。僕はやっぱり草ヒロ好きですが、アイツらの言うことも、何だか妙に納得させられましたよ~。」
見習い 「全くそうですねー。でも~、草滅会の人達って、あんなんだったんすね。なんか意外な感じ。・・・あの女の子が・・・ちょっと可愛かったかも・・・。」
博士 「なんじゃと?・・・オヌシ、それはひょっとして、“恋”というやつではないかの?・・・うい奴め~!」
助手 「丁度年も近そうだしね。あっちは草ヒロは嫌いでも、クルマは好きだろうし、案外イケるんじゃ・・・?」
見習い 「もー、やめてください!2人とも!・・・ほら、オレらも行きますよ!」
博士 「若いってええのう~。」
助手 「ですねぇ~。」
博士 「オヌシもまだまだ若いじゃろうが!」
助手 「博士と比べれば、ですけどね・・・!」
・・・その後、このエスティマエミーナは撤去されてしまったそうな。しかし、ヴィヴィオビストロは撤去を免れたそうな。
“その後の様子”(ストリートビューではありません)
ご覧の通り、エスティマエミーナが撤去され、新たにクルマを停めることが出来るようになり、社会の役に立っています。しかし、新たに来たクルマがボロッちいカルタスとは、またこれが放置車両になってしまいそうな雰囲気です。
どうせなら、顔が壊れてエスティマよりも見苦しい、ヴィヴィオを撤去してもらいたかったものですね。
つづく
「このエスティマエミーナが撤去され、ヴィヴィオビストロが撤去されなかったというのは事実じゃ。だがしかし、この物語、そしてこの物語に登場する団体・登場人物はワシを含めてフィクションじゃぞ。実在するものとは、一切関係無いわ。」
「博士、今日の話は長かったですね~。特に博士のあのセリフなんて、読み飛ばした人結構いそうですが。」
「余計なお世話じゃ。ワシは徹やその手下達に向って言ったんじゃぞ!ヤツらが聞いてくれれば、読者がいくら読み飛ばそうと関係無いわい。・・・まあしかし、まさか草滅会と遇うとは思わんかったのう。そして、双方の草ヒロに対する主張が拮抗して、話が長くなったんじゃ。」
「それにしても、放置車両の前で、白衣着た大人2人にただの若者1人と、黒スーツの大人3人とが言い争いをしてるってのは、どう見ても怪しくないですか?今思ったんですけど。」
「確かにそうじゃの。よく通報されなかったわい。」
「草ヒロの前でウロウロしているというのも、傍から見たらパーツ泥棒にしか見えないでしょうし、気を付けたいものですね。」
「そうじゃな。」